人が亡くなると多くの事務手続きが発生します。
それは、どんなに大切な方が亡くなっても必要な事務量に違いはありません。
親族への連絡、行政への届出、通夜・葬儀・火葬・納骨・埋葬の手続き、施設や病院の清算、部屋の片付け・電気・ガス・水道・ネット等の解約、賃貸借契約の解除等々。
これらの事務手続きを、頼める家族や知人がいれば問題はありませんが、身近に頼れる家族がいない方、家族と疎遠にしている方、頼める知人が近くにいないという方は心配だと思います。
また近年では高齢化の影響もあり、高齢の配偶者やご子息が事務手続きをおこなわなければならず、手続き不足や間違った方法を取られているケースも問題になっています。
死後事務委任契約は、ご自身が亡くなった後の諸手続き、ご自身の身辺の整理に関する手続きを具体的にあらかじめ第三者に委任しておく契約で、ご自身が亡くなった後のことを心配されている方のための契約になります。
遺言執行との違い
死後に手続きを行ってもらう制度として、遺言執行というものがあります。
遺言執行は、遺言がある場合に、その遺言の内容を実現してもらうものです。
遺言の中で遺言執行者を指定しておくことで、その人が遺言に書かれている内容についての事務を行ってくれます。
たとえば、不動産を長男Aに遺贈する内容の遺言を残しておき、遺言執行者を指定しておいた場合、遺言執行者は不動産の登記をAに変更する登記を行って、引き渡しのための事務を行ってくれます。
死後事務委任契約との違いは、遺言執行はあくまで遺言の内容を実現するためにあるので、遺言で効力を生じない事項については関わることができません。
たとえば、葬儀についての希望がある場合で、遺言に葬儀についての記載をしても効力は生じないため、遺言執行者が葬儀について関与する権限がありません。
遺言で効力が生じないことについて、死後にお願いしたい場合には、死後事務委任契約を別途定めておくことになります。
後見人制度との違い
判断能力が不十分となった場合に本人の事務を行うなどのためにつける、後見人制度(成年後見制度)というものがあります。
これは、加齢・認知症などを原因として、正常な判断能力がなくなって、民法が規定する意思能力が無く契約ができなくなった場合などに、本人のために療養看護・財産管理を行う成年後見人を選任するものです。
死後事務委任契約と後見人制度の違いは、死後事務委任契約は死後についての事務を執り行うもので、後見人制度は生きているうちの事務処理と亡くなったあとの引き継ぎのための権限のみに限られる点にあります。
死後事務委任契約のポイント
- 死後事務委任契約とは、自分の死後に発生する事務について委任をする契約のこと
- 家族、親族に負担をかけたくない方に死後事務委任契約がおすすめ
- 煩雑な手続きを一任することで、大切な家族とのお別れに集中できる
死後事務委任契約のメリット
- 身近に頼れる家族や知人がいなくても亡くなった後のことについて安心ができる
- 家族に面倒な手続きで迷惑をかけたくない場合に、迷惑をかけないですむ
- 葬儀や納骨の方法、遺品の整理について自分の希望に沿った形で行える
- ご両親やご家族が亡くなった際に起こる不慣れな手続きを行わなくてすむ
死後事務委任契約のデメリット
- 家族内で行うのと違い専門家に依頼をすると費用がかかる
- 契約を結ばなければ依頼をしても事務を行えない
- 契約解除を巡って委任者・遺族とトラブルになることがある